小安峡目次
今回は東北の大自然に囲まれた観光地である小安峡(おやすきょう)の魅力についての記事を書かせて頂こうと思います。
実は私のふるさとに近い場所であるため、この記事には力が入っております。
ただ「そもそも小安峡って何?」と思われる方も多いと思いますので、簡単にどのような観光地なのかをご説明させて頂きますね。
小安峡とは、岩手県と山形県と宮城県に近い秋田県湯沢市の山岳部にある温泉渓谷地帯です。
小安峡は景観や温泉を楽しむだけではなく、地形学や火山学、エネルギー学を肌で感じられるスポットでもありますので、リアルな学びを体験されたい方にもおすすめなスポットになります。
そんな小安峡とは、皆瀬川という川の力により長い年月をかけて両岸が深く浸食されていったV字谷となっております。
栗駒国定公園にも含まれているすばらしい渓谷になんです。
故に様々な滝や切り立った渓谷の迫力を感じる事ができますし、長い年月を想像してノスタルジックな雰囲気を楽しむ事もできます。
そんな小安峡渓谷の最大の特徴と呼べるのが絶壁の岩間から蒸気が噴出している場所があるという事です。
98℃にもなる蒸気が深く切り立った岩肌から激しく噴出しており、辺りに蒸気が立ち込めている様は、自然の神秘さと地球のエネルギーを感じさせてくれます。
このように、切り立った絶壁から激しく蒸気が吹きでている光景というのは世界的に見ても珍しいと言われております。
そんな珍しい光景がなぜ小安峡渓谷に起こるのかといいますと、地球の内部にあるマグマの影響のようなのです。
山々は火山らしくない雰囲気の小安峡なのですが、実は火山活動が活発で、周辺地帯が「見えない火山地帯」と呼ばれております。
秋田県湯沢市全体が「地熱の街」として地熱エネルギーの有効活用を試みている地域ですが、小安峡周辺はその代表的な場所として世界に先駆けた活動を試みている地域でもあります。
実際に平成6年からは地熱を活用した発電が試みられて「上の岱地熱発電所」が稼動していますし、令和元年5月には「山葵沢地熱発電所」が営業運転を開始しております。
エネルギー問題解決の打開策になる事を期待できますね。
絶壁の岩肌から蒸気が吹き出るメカニズムとしましては、「地熱貯留層」と呼ばれる高温の蒸気や熱水が溜まる地表が地表から露出して亀裂が入っているため、絶壁からマグマのエネルギーを蓄えた蒸気が吹き出しているようです。
このような地帯があるのは世界的にも珍しい場所になります。
さらにはこの蒸気には有害なガスが含まれていないため、勢いよく湧き出す蒸気(大噴出)を間近に体感できるのが小安峡渓谷の特徴になります。
地球の力強さと美しさを兼ね合わせた世界的にも珍しい場所が小安峡という事になるわけですね。
そんな小安峡渓谷の特徴には、四季の顔がハッキリしているという点もあります。
東北地帯の山岳部に位置し、周りの山々の影響で豪雪地帯としも有名な場所ですので、四季の彩りをハッキリと感じる事ができ、季節それぞれの味わい方を楽しむ事ができます。
たとえば春には命の芽吹きを感じる事ができますし、夏には深緑からエネルギーをもらう事ができます。
秋には木々の紅葉で感動する事ができますし、冬は雪と氷から神秘的で幻想的な美しさを味わう事ができます。
小安峡には一年を通してそれぞれの魅力がありますので、お気に入りの季節に訪れてみるのが良さそうですね。
そんな小安峡の歴史については、詳しい書物が残っておらず、正確な事が分かっていないそうです。
ただ一節には康平2年(西暦1059年)に「源平合戦」で知られる源義経がこの地を通ったと言われております。
江戸時代後期には、旅行家で博物学者もあった菅江真澄もこの地を訪れ、勢い良く吹き出す蒸気(大噴出)の迫力について「雷神のひびきのようなすごい音がして水がはじけるように湯が噴き出していた」と高松日記に記しています。
そして、小安峡周辺には大きな集落がないにもかかわらず、江戸時代になると小安峡には湯宿が14軒以上立ち並ぶ温泉街になっていたと言われております。
なぜこのように温泉街としえて栄えたのかといいますと、木こりが山中の泉で足の傷を治している麋(カモシカ)を見て温泉を発見したという逸話や、片脚を折った鶴が脚を温めていたところ10日で治り飛び立つ姿を見て温泉を発見したという逸話があり、温泉街として栄えるきっかけになったと考えられております。
そのような温泉の魅力により、当時秋田県を収めていた藩主の佐竹義和も小安峡に訪れ、温泉につかり疲れを癒やしたとする記録もあります。
小安峡は、今では静かで秘境的な雰囲気が立ち込める温泉観光地になっておりますが、江戸時代中期から明治時代前期にかけては、太鼓や三味線、芸者さんを呼んではどんちゃん騒ぎをするといったような大いな賑わい方をしておりました。
なぜかといいますと、宮城県気の仙沼と秋田県の矢島まで交易ルートの途中に小安峡があったためだったと考えられます。
行商人が旅の疲れを温泉で癒やしたり、仕事のストレスを発散しようと娯楽の意味で小安峡に立ち寄っていたんですね。
ただしかし、明るい話ばかりではなく、大飢饉や戊辰戦争の影響といったように、人の生死が身近だった側面も持ち合わせておりました。
当時は厳しい時代背景の中、つかの間の憩い場所とされて小安峡が重宝されていたんでしょうね。
小安峡の最大の魅力はなんと言っても「大噴出」にあるでしょう。
世界的にも珍しい光景は息を飲む美しさがあります。
この大噴出は「河原湯橋」という場所から大噴出を見る事ができます。
この橋は国道398号線から集落地域に入るための橋になっているため、分かりやすい場所になっておりますので、迷う心配はありません。
こちらの橋の上からでも小安峡の魅力を十分に楽しめますが、もっと大噴出に近づきたいという方は、渓谷を下って蒸気が大噴出しているギリギリの場所立ち入る事ができますので、そこで最高の写真を撮る事ができます。
小安峡大噴出は四季折々の渓谷の自然と、大噴出が見られる絶景スポットになっております。
特に紅葉は格別で、東北の有名紅葉スポットの上位に選ばれているほど見応えがあります。
例年の見頃時期は10月中旬~11月上旬冬になっておりますので、秋田県で紅葉楽しみたい方は是非訪れて頂きたいです。
また、小安峡ではトレッキングを楽しむ事もできます。
このトレッキングは「女滝沢トレッキングコース」と呼ばれております。
標高差は200mほどの道のりを約1時間で回れるコースですので、お手軽なトレッキングコースになっております。
このコース中には、樺(カバ)トチノキ、ホオノキ、ミズナラ、イタヤカエデ、ヤマザクラ、ブナが立ち並んでいたり、全国で4番目に大きいヤチダモの木があったり、樹齢200年を超える巨木や奇木などが沢山あるため、変化に富んだコースになっております。
初心者の方も十分に自然を満喫できる道になっておりますが、草木の影響により道を見失いやすくなっている事があるため、道に詳しい人と同伴する事が推奨されております。
ちなみに地元の観光協会に予約をすれば、様々な楽しみ方を熟知した専門のガイドさんが案内してくれるとのことです。
【皆瀬観光協会】電話:0183-47-5080二人~十二人の申込みで一時間5,000円の要予約制となっております。
そして冬には大噴出が凍って高さ20m、幅80mほどになる超巨大なつららができます。
その美しさはまるでクリスタルのような輝きを放っており、自然の美しさを堪能する事ができます。
また期間限定で超巨大つららのライトアップも行われおりますので、より幻想的な光景を楽しむ事ができます。
温泉スポットとしては湯守を続けて12代続く不動の名旅館である旅館多郎兵衛が人気です。
もしくは、小安峡温泉で唯一渓谷側にある宿旅館松葉館も人気があります。
ご予算とプラン内容に合わせて選んでみましょう。
そのほかには、地熱を利用した低温殺菌牛乳から作られるソフトクリームが有名な栗駒フーズの工場直売所もあります。
夏にベンチに腰を掛けながら、このなめらかで奥行きのあるソフトクリームを味わうのは最高ですよ。
そして近くにはキャンプが楽しめるとことん山キャンプ場があります。
テントやコテージ、バンガロー、ツリーハウス、などの宿泊施設がありますし、レンタル品も充実しておりますのでお気軽に大自然の中キャンプを楽しむ事ができます。
そして、小安峡温泉の源泉かけ流しの温泉もあります。
と、このように一日を通して小安峡の様々な自然を満喫する事が可能ですので、ぜひ秋田県湯沢市へお越しの際は立ち寄って頂きたいスポットになっております。
そんな小安峡の周辺にも様々なおすすめスポットがあります。
特におすすめなのは小安峡から15キロほど離れた場所で生まれた日本三代うどんの一つである「稲庭うどん」です。
稲庭うどんとは平で細い麺で、つるつるもちもちした食感が特徴的なうどんです。
多くの方は、きっとこの食感に驚かれると思います。ぜひ食べて頂きたい郷土名産です。
そのほか小安峡から13キロほど行くと「河原毛地獄」というスポットがあります。
河原毛地獄とは、標高が800メートルほどの山になっているのですが、いまだに火山活動が活発で辺り一面が灰色の溶岩に囲まれております。
そして、至る所で硫黄成分を含んだ蒸気が立ち込めているので、異世界の雰囲気を感じながら散策する事ができます。
河原毛地獄の中には、温泉が滝になっている場所があります。
河原毛大湯滝とよばれており、高さ20メートルから落ちてくる温泉の影響で天然の滝壺となっております。
湯治を楽しむ事もできますのでご入浴の際は水着を持っていかれると良いでしょう。
そして河原毛地獄に近い場所に「泥湯温泉」があります。
泥湯温泉とは、硫黄成分を含んだ白く泥のように濁った温泉が特徴的な温泉です。
泥湯歴史は古く、1200年前(平安初期)には白く濁った泉質から由来して「泥湯」という地名が名付けられるようになりました。
そして、泥湯が湯治場として栄えるきっかけになった逸話があります。
その昔、病に苦しむ少女が湯治をするため温泉に入ろうとしていたが、透明な温泉であったため恥ずかしくて入浴できずにいると、突然天狗が現れてお湯を白く濁して上げたと言い伝えられております。
天狗伝説により、健康増進に効果があるとされる歴史ある温泉地です。
そんな小安峡へアクセスするには、車ですと東京から約480kmの道のりになります。
イメージとしては仙台をさらに北上して岩手県と秋田県にも近い鳴子温泉に近い印象になります。
運転される際は、高速道路を活用しても6時間30分ほどかかりますので、車を運転できる複数名でお出かけされるのが良いでしょう。
個人的なおすすめとしましては、岩手県一ノ関までは新幹線「やまびこ」を利用して、一ノ関からはレンタカーを借りて小安峡へ向かうのが良いと思います。
一ノ関からですと約65kmの道のりになりますので運転される負担が少なくなることでしょう。
ただし、いずれにしてもかなりの山道を運転する事になりますので運転に不安を感じられる方はバスを利用することも可能です。
バスを利用されるのであれば、東京から秋田新幹線に乗り大曲で下車します。
大曲駅からは普通列車に乗り、湯沢駅で下車します。湯沢駅からは小安線バスが運行しているため、バスで小安峡へ行くことができます。
また、「こまちシャトル」という、おひとり様から利用できるタクシーを使った予約制のタクシーサービスもあります。
ここで一つおすすめがあります。
もしも、冬に遠方から小安峡へ訪れるのであればバスやこまちシャトルのご利用を強くおすすめいたします。
なぜなら秋田県内でもかなりの豪雪地帯となっているためです。
冬になると湯沢市の街なかでも1メートルほどの積雪になるので、山岳部である小安峡はさらに雪深くなっております。
その差は、湯沢市の街なかでは雪が降っていなくても小安峡では降雪&積雪している事が多いほどです。
ですので、冬場は公共交通機関をご利用いただくのがおすすめとなっております。
また、冬季間は通行止めになっている道路もありますので、冬季間に運転でおこしになる際は道路事情を十分にご確認いただきたく思います。
と、このように人を寄せ付けない秘境的な存在の小安峡ですが、その分肌で感じられる自然の美しさは格別なものになります。
都会の喧騒から離れたい方には格別な癒やしとなるでしょう。ぜひ小安峡へ足を運んでみてください。